熱を出してしまいました。大したことはないと思いますが、ゆっくり寝るとします。
さて、久々となりますが、読んだ本の記録です。
「脳は世界をどう見ているのか」 ジェフ・ホーキンス(著)
副題に、知能の謎を解く「1000の脳」理論とつけられています。
本当にディープラーニングで汎用知能(AGI: artificial general intelligence)に近づけるのかというのが疑問で、最先端の研究者がどう考えているのかというのが知りたくて借りてみた本です。
3部に分かれていて、第1部が脳科学の最新情報を述べた「脳についての新しい理解」、第2部が脳科学の最新情報をAIにどう応用していくかを述べた「機械の知能」、第3部は著者のコラムみたいなものを集めた「人間の知能」といった構成になっています。
Amazonレビューでは、第3部は不評ですが、私としては最後まで面白く読めました。
著者はパームコンピューティングの創始者
大学を卒業してから、脳科学の研究者を志したものの、研究の賛同(=資金)が得られず、パームコンピューティングを創設、その資金をもとに脳科学の研究所を設立したというような経緯で、研究者となったようです。
第1部: 脳科学の最新情報
ここは無茶苦茶面白かったです。
- 人間の脳は運動や本能を司る古い脳と、知能を司る新しい脳(大脳新皮質)に分けられる。
- 大脳新皮質は、150万本の柱(コラム)の集まりで、それぞれののコラムはほぼ同じもの
- 150万個のコラムが古い脳を介して繋がっている
- コラムの基本機能は座標系であると著者は考えている
- 古い脳にも座標系を持っている。すなわち古い脳の構造を大量にコピーしたものが大脳新皮質ではないか
- シナプスは、近位シナプスと遠位シナプスに分類しているが、知能を構成するのは近位シナプスと考えられてきた
- しかし著者は、遠位シナプスが重要で、予測や記憶といった部分が遠位シナプスで起きているのではないかと考えている
などなど、とても面白い内容でした。
副題で「1000の脳」理論と書かれていますが、「150万の脳」理論の方がいい気がしますね。
第2部: 脳科学の最新情報のAIへの応用
この部分はまだまだ始まったばかりでほとんど進んでいないという印象でした。
ただ、AGIを実現するには、現在のディープラーニングの延長では不可能で、脳科学の最新情報を組み込んでいく必要があると著者が考えているのは、私の最初の疑問に回答を得られた気分です(間違っている可能性もありますが)。
古い脳にある座標系をシミュレートできれば、新しい脳のシミュレートも可能になると著者は考えているんだと思いますが、そもそも古い脳のシミュレートすら現時点ではできていない状況です。
第3部: コラム
内容としては、人間が滅亡した後で、人類が存在したことを示す方法は何かとか、人間の脳をコンピュータにコピーすることができるようになるか、できるようになったら何が起きるのかなどです。
私は面白く読めましたが、この本に書かれている内容として相応しいかは疑問です。不評なのも納得です。
総評
本としては実用的ではありませんが、最新の脳科学の状況やAIの将来を考える上では必読といってもいい内容だと思いました。お勧めです。